「カクテルパーティ効果」というものがある。
ざわめきの中で、聴く必要のある音だけを
聞きとる能力の発現のことだ。
「ゴショゴショ、デッデ、ドドド で ございます。」
身のこなしも優雅なウェイターによって
ワイングラスに注がれていく
”ゴショゴショ 、デッデ、ドドド”。
いや、そんな名前のはずがない。
きちんとお近づきにならなければ。
ちらっとラベルを盗み見ると、
フランス語か、イタリア語か、ポルトガル語が、
読めない言葉が名乗りを上げる。
ワインのふるさとも、
異国の料理の名も、
きょうのおすすめの魚も、
お向かいの人の会話も、
全部ざわめきに溶け込んで行ってしまう。
現れてくれよ、カクテルパーティ効果。
今宵、私が口にしている、
この美味なモノはなんなのだ。
いつでも料理はいつでも胃袋を満たす。
でも、その食べ物、飲み物の名を
耳袋に入れて持ち帰ることができない。
まあしかたない。
どうせ、酔っ払いになるのだし。
グラスを傾け、頭も傾き、
中身がこぼれて夜は更ける。
2016年7月27日