そでふり灯籠

灯籠やあかりを集めています

歌行燈(泉鏡花)

で、二台、月に提灯かんばんの灯(あかり)黄色に、広場(ひろっぱ)の端へ駈込むと……石高路(いしたかみち)をがたがたしながら、板塀の小路、土塀の辻、径路(ちかみち)を縫うと見えて、寂しい処幾曲り。やがて二階屋が建続き、町幅が糸のよう、月の光を廂ひさしで覆うて、両側の暗い軒に、掛行燈(かけあんどん)が疎(まばら)に白く、枯柳に星が乱れて、壁の蒼いのが処々。長い通りの突当りには、火の見の階子はしごが、遠山(とおやま)の霧を破って、半鐘(はんしょう)の形活けるがごとし。……

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テーマの著者 Anders Norén